一人っ子の遺産分割協議の是非/名古屋・岡崎市の税理士法人アイビス 相続サポートセンターが解説


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事例

関与先の資産家の甲は、入退院を繰り返していましたが、X1年の9月1日に逝去しました。
相続人は配偶者Bと長女Cの2人です。
長女によると、遺産の分割についてはそれぞれ半分ずつ相続すれば良いとの合意をしていたとのことです。
しかし、妻(母)はこの遺産分割協議書の作成及び署名をする前に、家の中で転倒して打ちどころが悪く、2週間で夫の後を追うように逝去しました。
このような場合に、甲の遺産に係る妻(母)の相続分をどのように扱えばいいのか。
できれば、甲の一次相続および甲の妻の二次相続に際して、相続税の負担が少なくなるようにしたいと考えています。

回答

資産家・甲が入退院を繰り返していたころから、BCはそう遠くない時期に相続が生じることを受け止められ、事前に遺産分割協議をし、甲の逝去後も協議内容は変わらないという背景がある。
他方、遺産分割協議書の作成を署名押印する前にBは逝去され、そしてCは一人っ子のため、民法の定めや裁判所の判断から、Bの逝去が後ではCは遺産分割協議書を行い、Bについての相続分を決めることができない。
この2つの要素から、相談者の思い、すなわち遺産のうち妻の相続分が1/2であること、そしてこれに対する相続税について、税額軽減の定めを適用するには登記実務で用いられている「遺産分割協議書」を活用することになります。

遺産分割協議とは

相続が開始すると、被相続人の遺産は相続人に移転します。
相続人が複数人であるときは、遺産は相続人の共有に属することになります。
すなわち、相続人が1人の場合は、遺産は単独で承継するので、分割の問題は生じない。
相続人が複数の場合は、共同相続人の共有に属している相続財産の全部、又は一部を、それぞれの共同相続人の単有もしくは新たな共有関係に移行させる手続きが必要となります。
これが遺産分割手続きです。

今回の事例の遺産分割協議

①    検討点
遺産分割協議の性質を踏まえると、ケース2の場合は甲の逝去時には配偶者Bは生存しているため、相続人は複数であり、Aの遺産はBとCの共有状態であります。
問題は、BがAの遺産についての意思表示、及び分割の合意を得る前に逝去したことであり、共同相続人であったBを欠いた状態で、Cのみの遺産につき、分割協議ができるかどうかとなる。
このような場合の相続登記につき、相続人が1人であっても、遺産分割協議が可能であるとして、国と争った事案があるので紹介します。

事件の概要

亡Aの遺産につき、Cは遺産分割未了のままBが亡くなったので、Aの遺産の全部を直接相続した旨を記載した、遺産分割決定書と題する書面を添付して、相続を原因とする所有権移転登記申請を行った。

これに対して、登記官が登記原因証明情報の提供がないとする却下決定をしたので、Cは1人で遺産処分を決定し、遺産分割をすることができる、及び一人っ子の場合だけ遺産共有持分の登記を経るのは不合理であるなどと主張して、却下処分の取り消しを求めて提訴した事件です。

主な争点は、Cが1人でBC間の遺産分割をすることができるか否か。

裁判所の判断の大要は、遺産分割協議は、共同相続人と共有状態にある遺産の存在の2つの要素が前提であり、相続人が1人であるときは、全ての遺産を単独で取得するため、遺産を分割する必要性は存在しない。
したがって、遺産分割協議書はなし得ないことになる。

配偶者の税額軽減の定め

遺産分割が未了でBが逝去したときは、一人っ子のCがAの遺産のうちBの相続分を含めて、A遺産の全てを取得するため、「分割」の対象となる共有状態の遺産が存在しないので、配偶者の税額軽減の定めを適用するのは困難だといえます。

遺産分割協議証明書の活用

今回のケースで、遺産分割協議書の作成したものの、これへの署名・押印は未了であるけれども、具体的なそれぞれの相続額の合意がある場合は、登記実務において用いられている「遺産分割協議証明書」を用いる方法があります。
その合意を証する次に挙げる書面を作成、自ら証明押印します。
 これにより遺産にある不動産については、法定相続登記を経ずして、直接名義変更することが可能となります。
課税実務においてもこの証明により、遺産分割協議が存在し、Aの遺産の「分割」がなされて、配偶者の税額軽減をうけることが可能となります

まとめ

本来は、相続税の配偶者の税額控除及び小規模宅地の評価減の特例を受けることができないことになります。
他方、本問の場合は共同相続人である母と長女の間で、遺産分割の合意がある。
長女は母子間で遺産分割が成立していることの証明書を作成して、署名捺印を行い、相続税の申告では「分割」がなされているとし、配偶者の税額軽減特例、小規模宅地の評価減特例を適用することができるものと考えられます。

名古屋・岡崎市の相続手続サポートセンターでは初回60分無料相談を受け付けております。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。


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