相続財産の把握が、なぜ重要なのか? 重要性について徹底解説
相続が発生した際、「何から手をつけて良いのかわからない」という方は
少なくありません。特に、相続財産の正確な把握は、その後の手続きをスムーズに
進める上で非常に重要です。
しかし、これが想像以上に複雑で時間のかかる作業になることもあります。
相続財産の把握が重要な理由
相続財産の把握は、単に故人の財産を知るだけでなく、複数の重要な
側面を持ちます。
1. 相続税の申告・納税のため
最も直接的な理由として、相続税の申告と納税が挙げられます。相続税は、
故人の遺産総額に基づいて計算されます。財産を正確に把握していなければ、
適切な税額を算出できません。
申告漏れや過少申告は、後で加算税や延滞税といったペナルティを招く
可能性があります。また、逆に過大に申告してしまい、不必要に多くの税金を
納めてしまうケースもゼロではありません。
2. 遺産分割協議のため
故人が遺言を残していない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、
誰がどの財産をどれだけ相続するかを話し合って決定します。
この際、財産の内容が明確でなければ、公平な分割は困難です。財産の一部が
見落とされていたり、存在しないと思われていた負債が後から発覚したりすると、
協議がやり直しになったり、相続人同士のトラブルに発展したりする可能性もあります。
透明性の高い情報に基づいて話し合うことが、円満な遺産分割には不可欠です。
3. 故人の意思を尊重するため
故人が生前、特定の財産について「こうしてほしい」という意思を持っていた
場合でも、その財産自体が把握されていなければ、故人の意思を尊重することは
できません。
例えば、特定の慈善団体への寄付を考えていた、あるいは特定の相続人に
渡したいと考えていた財産があったとしても、存在が不明では実現しようがないのです。
4. 負債の有無を確認するため
相続財産は、プラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)だけではありません。
借入金や未払金、連帯保証債務といった**マイナスの財産(負債)**も含まれます。
もし負債がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄を検討する必要が出てくる
こともあります。相続放棄の申述には期限があるため(原則として自己のために
相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)、負債の有無を早期に
把握することが極めて重要です。
相続財産を把握する方法
では、具体的にどのようにして相続財産を把握すれば良いのでしょうか。
1. 故人の自宅や書類の確認
まずは、故人のご自宅にある手帳、通帳、郵便物、契約書、保険証券、
確定申告書類などを丹念に確認しましょう。
ここから、預貯金口座、証券口座、不動産の所在地、生命保険の加入状況、
借入金の情報など、多くの手がかりが見つかります。特に、金融機関からの
定期的な送付物や、税務署からの通知などは、重要な情報源となります。
2. 金融機関への照会
故人が口座を持っていた可能性のある銀行、証券会社、信用金庫などに対し、
残高証明書や取引履歴の開示請求を行います。
故人の氏名、生年月日、最後の住所などの情報があれば、口座の有無を
確認できます。利用していた可能性のある金融機関が不明な場合は、自宅に
残された手帳や郵便物からヒントを得るか、広い範囲で照会をかける必要が
出てくることもあります。
3. 不動産の調査
故人が所有していた不動産については、固定資産税の納税通知書を確認したり、
法務局で名寄帳(なよせちょう)を取得したりすることで、所有不動産の一覧を
確認できます。
名寄帳は、市町村ごとに故人が所有する不動産を一覧で記載したもので、
見落としを防ぐ上で非常に有効です。また、過去の不動産売買契約書なども
確認の対象となります。
4. 生命保険・損害保険の確認
生命保険会社や損害保険会社からの郵便物や保険証券を確認し、加入状況を
把握します。
保険金は、受取人固有の財産となる場合と、相続財産に含まれる場合が
ありますので、その点も確認が必要です。
5. その他の財産・負債の確認
自動車、ゴルフ会員権、骨董品、書画、貴金属なども相続財産に含まれます。
また、個人事業を営んでいた場合は、事業用の資産や負債も把握する
必要があります。借入金については、消費者金融からの明細、クレジットカード
の利用明細なども確認しましょう。
《 専門家へ依頼するメリット 》
相続財産の把握は、非常に手間と時間がかかる作業であり、
専門的な知識も必要とします。
特に、被相続人が多くの金融機関と取引があったり、複数の不動産を
所有していたりする場合、相続人だけで全てを正確に把握することは困難を
伴います。
このような場合、税理士や弁護士といった専門家に依頼することで、以下の
ようなメリットがあります。
・正確な財産調査: 専門家は、相続財産調査のノウハウを持っています。
見落としがちな財産や負債も網羅的に調査し、正確な財産目録を作成します。
・手続きの代行: 金融機関への照会や法務局での書類取得など、煩雑な
手続きを代行してもらえます
・相続税の適正な計算と申告: 把握した財産に基づいて、相続税の計算を行い、
税務署への申告までサポートします。
相続税の特例適用についても、専門的な視点からアドバイスが可能です。
・遺産分割のアドバイス: 財産全体を把握した上で、相続人間の公平な
遺産分割に向けた具体的なアドバイスを提供できます。
・トラブルの回避: 財産に関する不明瞭な点を解消し、相続人間の無用な
トラブルを未然に防ぎます。
相続は、人生においてそう何度も経験することではありません。だからこそ、
後悔のないよう、最初の一歩である財産把握を確実に行うことが大切です。
当事務所では、お客様の状況に合わせて、きめ細やかなサポートを提供しております。
お困りの際は、どうぞお気軽にご相談くださいませ。